第5回

 さて、今回は令和3年度AM第7問です。こちらは土壌汚染状況調査の契機になる命令の前段、法第4条第1項に基づく届出の要否に関する問題なので、順番で行く、地歴調査に関する設問よりこちらが先かなと。こちらも午後の法令等に分類されるような問題です。

 この問題は一見、平成31年4月から施行された改正法の法第4条第1項の届出の中で、特定有害物質使用特定施設を設置している(た)事業場については従来の3,000m2以上の土地の形質の変更の際ではなく、900m2以上の土地の形質の変更の形質の変更の際に当該条項に基づく届出をしてくださいねと改正されたことを受けた問題に見えます。

 ただ、出題者がものすごく優しい選択肢を作ってくれたおかげで、平成31年から施行された内容を知らなくても正答にたどり着けちゃいます。

 選択肢とそれぞれの条件を見ていった時、Eの条件が、有害物質使用特定施設が現存せず、土地の形質の変更面積が3,000m2を超えています。

 これは平成31年4月以前でも①+②の範囲で届出の必要なパターンです。なので、Eのある選択肢が正解。

 で、その上のDの条件が、X事業場だけ有害物質使用特定施設の設置があり、Yは無し。ただ、土地の形質の変更面積が3,000m2以上だけどなぜか届出のいる範囲が②だけになっていますよね。ですのでDは誤り。ということで、Dのある選択肢を消していくと、あらら、(3)だけになってしまいました。

ということで、正答は(3)。

 出題者の優しさが滲み出た問題でした。

で、こんなんで終わったら味気ないので、少しこの辺の条文をちゃんと見ていきましょう。

 まず、土壌汚染対策法第4条第1項。

 一定規模というのは、赤枠で囲った環境省令(土壌汚染対策法施行規則)で規定されており、施行規則第22条。

 原則3,000m2。そのただし書ってのが平成31年4月から変わった部分。 

 特定有害物質使用特定施設を設置している事業場というのは分かりますが、後段の過去形、特定有害物質使用特定施設を設置してい「た」事業場というのは、過去ずっと遡るのではなく、簡単に言えば、特定施設の廃止から法第3条の規定に基づく調査が履行されるまでの間、又は、法第3条第1項ただし書の確認を受ける前の事業場という意味です。

 なお、法第3条第1項ただし書の確認を受けた土地については、法第3条第7項に同様の手続きがあるので、そちらでカバーされています。

 法律、施行規則は非常にシンプルな書き方ですが、正直、ここに書かれていることが全てです。

 ではA~Eまで一つ一つを見ていきましょう。

 赤枠で囲ったのが、特定有害物質使用施設が現存する事業場の範囲です。青点線枠は土地の形質の範囲。

 Aは、有害物質使用特定施設の設置されている事業場の範囲で1,000m2の土地の形質の変更なので、範囲①+範囲②で届出が必要になります。

【A】

 Bは、有害物質使用特定施設の設置されている範囲で1,400m2の土地の形質の変更なので、Aと同じく範囲①+範囲②で届出が必要になります。Bを見てみると、届出の範囲が範囲①のみになっているのでこれは誤り。

【B】

 Cは、有害物質使用特定施設の設置されているのはX事業所のみで、その範囲の土地の形質の変更面積は500m2。有害物質使用特定施設の設置されていないY事業所の範囲の土地の形質の変更面積は500m2で、足しても1,000m2なので、そもそも法第4条第1項の届出は不要となります。

【C】

 Dは、上記でも触れたように、形質の変更の面積自体がX事業所とY事業所で3,000m2を超えているので、範囲①+範囲②の範囲で法第4条第1項の届出が必要です。

 Eも上記で触れたように、形質の変更の面積自体がX事業所とY事業所で3,000m2を超えているので、範囲①+範囲②の範囲で法第4条第1項の届出が必要です。

 でも、そもそも一体と見なされる土地の形質の変更で法第4条第1項の届出を要する土地の形質の変更(切土と盛土。盛土だけの場合は除く)を行う場合、

問題の条件にあるような、

範囲①だけ届出するとか、範囲②だけ届出するとか、あるんですかねえ?

法や施行規則の条文を読む限りは、そういうケースはないように思うんですがw

それだけでもBとDの選択肢は消えますね。