第3回
令和3年度、午前の試験問題の4問目は、出題者大好き地下水に関する問題です。
この年はざっと見てもこの1題しかないみたいなので、ちょっと控えめになりましたかね。というかネタ切れなのかな?
この問題はタメになりますねえ。
だって、基本的な知識を身に着けるのにもってこいですから。
ここに書かれている用語ぐらいは理解しておいても損はないです。
まず問題は、パラメータが大きくなったら到達距離が短くなるものの選定です。
問題の聞き方は良くないですが、多分、一定の期間内に汚染の到達する距離のことを言っているのでしょうね。
地下水汚染の到達距離に関係するものとしては、地下水の流速、当該物質の土壌への収着(吸着)、当該物質の分解なんかがあります。
まず、地下水の流れる流速vについては、
v=k(dh/dx)
といったダルシーの法則というのが成立すると言われています。
ここで、kというのが透水係数、dh/dxが動水勾配と言われるものです。透水係数のkというのは結構共通して見られますが、文献によっては、iとかで表されることもあります。透水係数kは、比例定数(本当は定数ではないのですが)で土質(地質)によって変わります。
だいたい礫>砂>シルト>粘土の順です。ここでダークホース的な扱いを受けているのがロームなどの火山灰質(粘)土なんですが、オーダー的には砂とシルトの間ぐらいですかね。
平成31年に環境省から公開された地下水汚染が到達し得る距離の計算ツールでは、
礫>砂礫>砂>火山灰質土>シルト質砂
で透水係数が設定されていたと思います。
動水勾配は、下の絵にあるような地下水位差と考えてもいいです。この動水勾配が大きければ大きいほど地下水の流速は早くなるということです。
ということで、透水係数、動水勾配、いずれも大きくなると地下水流速は早くなり、一定の期間内に地下水汚染の到達する距離は長くなります。AとEの入った選択肢は、この時点で消えます。
土壌-水分配係数というのは、有害物質に限らずある物質が土壌中に入ってきた時の固相(土壌)と液相(地下水)に分配される割合です。簡単に書くと、(土壌に分配される量/地下水に分配される量)って感じですから、この値が大きくなると土壌に分配される量が多い(土壌に吸着されやすい)ということで、一定期間に地下水汚染の到達距離は短くなります。
半減期というのは、読んで文字のとおり。物質の量が半分になる時間です。ですので半減期が大きくなればそれだけ物質の量が半減する期間が長くなる(より長くその物質が地下水中に存在する)ということで、一定期間における地下水汚染の到達距離は長くなります。
ここまでの説明で、パラメータが大きくなると地下水汚染の到達距離が短くなるもののパラメータとしては、分配係数Dだけです。
となると、選択肢は(4)だけとなり正答は(4)です。
あと、分かりにくいのは有効間隙率。
有効間隙率とは、土壌の間隙(土粒子と土粒子の隙間)の中で、実際に水が流れるスペースの割合です。
必ずしも正しくないかもしれませんが、イメージとしては下の絵のような感じです。
で、この有効間隙の割合を有効間隙率と呼び、nで表記されることが多いです。
結局地下水流速は、さっきのダルシーの法則で示した流速(ダルシー流速)をこの有効間隙率で除したもので表されます。この地下水流速は、実流速と呼ばれます。
v(実流速)=v(ダルシー流速)/n
有効間隙率が大きければ大きいほど実流速は遅くなりますから、一定の期間に到達する地下水汚染の距離は短くなります。
この辺の意味は想像してみて下さい。
同じ圧力で管路に水を流す時、管の径が大きい場合と小さい場合を。管の径が小さい方が、管の径が大きい方より早く水が流れるってのは感覚的にわかると思います。
有効間隙率の大小ってこういうイメージで私は理解しています。
間隙の中で水が流れる部分と流れない部分が何故できるか?その辺は難しくなるので深く突っ込まないことにしましょう。(不飽和の浸透流なんかを勉強すれば良く解ります)
この問題は、地下水の流速の早い、遅いなんかの知識がメインですが、もう一つ重要な話に地下水の流向に関する話があります。
そちらについては、別で触れたいなあと思っています。