環境基準
土壌汚染対策法の土壌溶出量基準、土壌含有量基準、地下巣基準は、土壌汚染対策法の枠内でしか使用されません。これは、原則ではなく鉄則です。例外はありません。自治体によっては条例で土壌汚染の調査の契機を定めた条例を制定しており、その基準として土壌溶出量基準や土壌含有量基準、地下水基準を定めている所もありますが、これも当該条例の枠の中で使用される基準です。
一方で、環境基準というものがあります。項目、基準ともに土壌汚染対策法の基準と似ていますが、多少、意味合いが異なるというのが混乱の基になる場合もあります。
以下に両者の基準の性質をメモしておきますね。
1.土壌汚染対策法の基準
土壌汚染対策法の土壌溶出量基準・土壌含有量基準は、法に定められたある一定の契機にある一定の方法で土壌の汚染の状況について調査(土壌汚染状況調査)し、この基準に不適合であれば「汚染のある土地」として管理していきましょうね、という意味の基準です。
この「汚染のある土地」の中で、人の健康被害のおそれがある状態の土地(よく飲用井戸が近くにあるとか、誰でもその土地に入ることができるとか)については要措置区域に指定され、措置してくださいねという土地に指定されることとなりますが、原則となる措置を決定するために地下水基準というものを使います。
つまり、地下水経由の摂取リスクの観点から決定されている土壌溶出量基準(この辺は別途項目を立てて説明しますね)が不適合で、かつ、その土壌による人の健康被害のおそれがある場合、地下水基準に適合しているか不適合であるか、行政より指示される措置の種類が変わります。
要約すると、土壌汚染対策法の場合、土壌汚染があるか判断するのが土壌溶出量基準、土壌含有量基準で、土壌溶出量基準不適合の場合、地下水の水質を見て、地下水基準の適否で原則的に指示される措置が決まってくるって感じです。
平成31年4月から、「目標土壌溶出量」とか入ってきたのでさらにややこしくなってきましたが、その件については措置の所で説明する機会があると思います。
2.環境基準
人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、終局的に、大気、水、土壌、騒音をどの程度に保つことを目標に施策を実施していくのかという目標を定めたものが環境基準である。
環境基準は、「維持されることが望ましい基準」であり、行政上の政策目標である。これは、人の健康等を維持するための最低限度としてではなく、より積極的に維持されることが望ましい目標として、その確保を図っていこうとするものである。また、汚染が現在進行していない地域については、少なくとも現状より悪化することとならないように環境基準を設定し、これを維持していくことが望ましいものである。
また、環境基準は、現に得られる限りの科学的知見を基礎として定められているものであり、常に新しい科学的知見の収集に努め、適切な科学的判断が加えられていかなければならないものである。
↑は、https://www.env.go.jp/kijun/index.html
のコピペですw
ポイントは「維持されることが望ましい、行政上の政策目標」ってところでしょうか?
土壌汚染対策法は基準不適合が確認されても人の健康被害のおそれが無ければ措置を求められず、健康被害のおそれがある場合でも、当該汚染の除去を求められることはレアケースです。
それに対し、環境基準は「維持することが望ましい」とされている値であり、その辺がややこしい所です。
一応、土壌汚染対策法は私人の私権を具体的に制限する法律で下手すると憲法の財産権にも関わる法律ですので、強制力を持って行えることってやっぱり合理的な範囲で必要最小限になるんですよね。
一方で、環境基準はあくまでも「目標」ってところで、それを達成するために強制力を持った立法で行政になんらかの施策を講じることを縛るものではないということです。